会社を安易に辞めてはいけないと痛感した出来事

仕事

前の会社で働いていた20代の頃の話です。
深夜残業も休日出勤もなんでもござれ! と毎日バリバリ働いていました。

その日は確か日曜日だったと思いますが、お昼過ぎに出社していつもより静かなフロアで仕事をしていると、「こんにちは~」と声がしました。
前の会社は小さな会社で、守衛さんもいないし、受付係もいない。社屋の入口の鍵も普通に開いていたので、だれでも中に入って来られたのです。今では考えらないですね。

お巡りさんが会社を訪ねてきた理由

声のする方を見ると、制服姿のお巡りさんがフロアの入口近くに立っています。近くに座っていた先輩社員が駆け寄って対応しています。
そして、お巡りさんは先輩としばらく話し込んでいましたが、やがて「お騒がせしました~」と帰って行ったのでした。

その日出社していた社員たちは、すぐ何があったのか聞きたくて先輩の周りになんとなく集まりましたが、先輩は多くを語ろうとはしませんでした。アレコレ聞いてはいけない空気を感じ、結局なぜお巡りさんが訪ねて来たのか、その日はわからずじまいでした。

数日後、同じ日に休日出勤していた別の先輩がそっと教えてくれた話は、驚くべきものでした。
数か月前に会社を辞めたある元社員が、公園で行き倒れていたのだそうです。警察に保護されたものの、身元引受人については話そうとせず、唯一持っていた会社の名刺から、お巡りさんが訪ねて来たのだったそうです。

サラリーマンも「板子一枚下は地獄」

前の会社は、長時間労働と安すぎる給料に嫌気がさして、毎月のように誰かが辞めていくようなところでした。だいたい皆、次の勤め先をみつけてから辞めていましたが、その公園で見つかった人の場合は、「〇〇社に転職」というはっきりしたものではなく、「△△△みたいなことをやるらしいよ」という、ちょっとフワッとしたものだった気がします。

地方出身で、ちゃんとした大学を出て、ちゃんと働いている。でも今でいう「陰キャ」で人付き合いはちょっと苦手、という私との共通点が感じられる方だっただけに、会社を辞めて半年もしないうちに公園で警察に保護される身になってしまうなんて、本当に衝撃を受けました。

吹けばとぶような会社ですが、私はこの小さな会社という舟で世の中を渡ってるんだなということをリアルに実感しました。なんとも頼りない「板子一枚」ですが、これがあるのとないのとでは大違い。会社が辛く感じらることもあるけれど、安易にこの小さな板切れを手を放してしまったら地獄に振り落とされてしまうかもしれない。

ほとんど接点はなかったけれど、大切なことを教えてくれた人

この件以来、私は辞める時は、①次の会社を決めてから、➁ステップアップになるような会社へ、と心に固く決めました。

私の性格は、たぶん「不安因子」の強いタイプ。人付き合いもどちらというと苦手。友だちも少ないほうです。人の懐に飛び込んでいくような思い切りの良さもなく、カッコつけのくせに気が小さい。そんなキャラなので、勢いで会社を辞めてしまったら、きっと誰にもうまく頼ることができず、すぐ生活に困って公園で保護されることになる!

在職中はほとんど口もきいたことのない方でしたし、その後も会うことも、噂を聞くこともありませんでしたが、私の人生にとって、とても大事なことを教えてくれた気がします。

どうかどこかで元気で暮らしておられますように。

ではでは。







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